興収23億円突破のアニメーション映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の上映後トークショーが1月21日(日)に都内映画館で実施され、古賀豪監督、脚本家の吉野弘幸、キャラクターデザインの谷田部透湖が参加した。
『ゲゲゲの鬼太郎』原作者・水木しげる生誕100周年記念作品として誕生した本作。かつての目玉おやじと水木の出会いを軸に、2人が立ち向かう壮絶な運命と“鬼太郎の誕生”の秘密をおどろおどろしく描き出す。
公開後2か月を経ても大ヒットを記録中で、「真夜中のトークショー」と名付けられた本イベントも遅い時間の上映にも関わらずチケットは即完。この大ヒットに古賀監督は「正月に実家に帰省した際、古い友人・知人から『良かったね』との連絡が沢山あった」と周囲からの反響を報告し、吉野も「10年くらい音沙汰のなかったアニメメーカーのプロデューサーから“飲みませんか!”と久々に連絡がきた。そのようなところからヒットを実感する」と笑顔。谷田部は「美容院での雑談の一つとして“『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』観ましたか?”と言われて驚いた」と“ゲゲゲ”ブームを肌で感じていた。
鬼太郎誕生の背景にある壮絶なドラマを描く本作の企画について古賀監督は「大人向けのホラーとして作るということ。そのオーダーを受けて、妖怪が出まくるホラーよりも人間関係のドロドロした怖さであればいけると思った。さらに水木しげる先生の生誕100周年という節目でもあったので、昭和の歴史を振り返るテイストも入れ込みたかった」と狙いを明かした。
一方、吉野は龍賀一族の着想について「プロットの段階から“龍賀一族”というアイデアはあって、『犬神家の一族』のキャラクター配置や人数を見ながら、このくらいの人数がいれば愛憎劇を描くことが出来るだろうと考えていった」とミステリーの古典からインスピレーションを受けた模様。古賀監督はバリエーションある残酷な怪死描写について「大人向けなのか子供向けなのかわからない中途半端な描き方では失敗すると思ったので、覚悟を決めて作りました。このようなテイストの作品では人の亡くなり方の工夫も大事な点です」と重要ポイントにしていたという。吉野も「シナリオ作りの段階からどのように殺したらいいのか、監督と何度も話し合いをした」と頷いていた。
脚本打ち合わせにはキャラクターデザインの谷田部も参加し、その段階からキャラクターたちのスケッチを提示していたという。これに吉野は「打ち合わせのその場で絵が上がってくると、こちらのやる気も上がって来るのでありがたかった」と感謝。龍賀一族の面々について谷田部は「それぞれのキャラクターに個性や魅力がないと映画は面白くならない。それらが出る様、試行錯誤しながら描きました」と話した。
龍賀一族の中でも強いインパクトを残すのが、長男・時磨。このヴィジュアルについて古賀監督が「お歯黒でおしろいを塗っているという設定はコンテの段階で決めた」と振り返ると、吉野は「キャラクタービジュアルが発表されたときは驚いた」と大笑い。谷田部は「実はお化粧をしていないバージョンもあったけれど、後半になって白粉とお歯黒のオーダーが監督からあった」と異色キャラ誕生の経緯を思い出していた。
独特な演出やカット割りも、不気味なストーリーにさらなる恐怖感を与えている。古賀監督は「この作品は怪奇幻想譚にしたかったので不安げな感じを意識。水木がタクシーで村に入っていく様子も怪奇的幻想世界に入っていく演出を施しました。村にはのどかな田園風景が広がっているけれど、それは単純なのどかさではない。誰かに見られているかもしれない…という怖さをイメージ」と演出術を解説した。
谷田部は、エンディングの鬼太郎誕生場面のキャラクターデザインを描く際の秘話を告白。スケッチの参考として、演出スタッフに水木のスーツをイメージしたビンテージスーツを着せてポーズを取ってもらったそうで「水木が抱き上げる鬼太郎の代わりに、スタッフルームにおいてあった子供時代の悟空のぬいぐるみを持ってもらった」と明かすと、吉野がすかさず「鬼太郎は実は悟空だった!?」とツッコんで場内大爆笑となった。
最後に吉野は「知らない日本人がいないくらいの認知度の高い作品を作り上げた水木先生と、東映が50年かけて作り上げてきたバックボーンがあってこその今回の大ヒット。改めて『ゲゲゲの鬼太郎』は凄い作品だと思う」としみじみ。谷田部も「ファンそれぞれの心に思い浮かべる鬼太郎には色々なバージョンがあるはずで、原作にもアニメにも色々な鬼太郎がいて、その全部が別世界。そのような世界の広がりが『ゲゲゲの鬼太郎』の魅力の一つ」と分析。
古賀監督は「本作は我々が純粋に面白いものを作りたいと思って作った映画。そのような作品をここまで皆さんに支持して頂けたのは理想的なこと。こんなに凄いことってあるんだと、モノ作りに対する希望をいただきました」と本作の記録的大ヒットを支えるファンたちに感謝していた。
冒頭からエンドロールまで見逃せない、初めて語られる鬼太郎の父たちの物語。SNSでは本作の舞台である、因習が渦巻く哭倉村を「因習村」、映画を見ることを「入村する」などの言葉が生まれ、特大ムーブメントを巻き起こしている本作!是非、劇場のスクリーンで体感していただきたい。
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